高齢化が急速に進む現代において、ご自身の、あるいはご家族の判断能力が不十分になった際に、どのように生活や財産を守っていくかは、多くの方が抱える切実な課題です。こうした不安を解消するために、「日常生活自立支援事業」と「成年後見制度」という二つの公的な支援制度が存在します。
しかし、これらの制度はその違いやどちらがご自身に最適なのか、といったことが分かりにくいと感じる方も少なくないでしょう。行政書士である私が、今回はそれぞれの制度の目的、内容、メリット・デメリットを分かりやすく解説し、皆様が安心して老後を過ごすための一助となれば幸いです。
判断能力が不十分になった時の強い味方「日常生活自立支援事業」とは?

「日常生活自立支援事業」は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方が、地域で安心して自立した生活を送れるよう支援することを目的とした事業です。この事業は、社会福祉法を根拠としており、全国の都道府県・指定都市社会福祉協議会(社協)が実施主体となっています。
利用対象者は、判断能力が不十分な状態にあるものの、ご自身の意思に基づいた契約を結ぶ能力がある方です。 費用については、初期相談や支援計画の作成は無料ですが、実際にサービスを利用する際には1回あたり数百円~千円程度の利用料が発生します(地域により異なり、生活保護受給世帯は無料となるケースが多いです)。
主なサービス内容は多岐にわたります。
福祉サービスの利用援助
介護保険サービスなどの情報提供、利用申込み手続き、利用料の支払い、苦情申立て手続きの支援を行います。
日常的金銭管理サービス
年金や福祉手当の受領手続き、電気・ガス・水道料金、税金、医療費、家賃などの支払い代行、預貯金の出し入れを支援します。
書類等預かりサービス
通帳、定期預金証書、実印、銀行印などの大切な書類や印鑑を、安全に保管します(ただし、宝石や骨董品などの高価なものは預かれません)
より広範な法的支援をカバー「成年後見制度」とは?
一方、「成年後見制度」は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を、法律の面から保護・支援することを目的とした制度です。この制度は民法を根拠としており、家庭裁判所への申立てによって利用が開始されます。
成年後見制度には、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。
法定後見制度
ご本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3種類に分かれています。家庭裁判所が適切な後見人等(親族、弁護士、司法書士、社会福祉士など)を選任し、財産管理や身上監護(生活・療養看護に関する契約など)に関する法的行為を行います。特に、不動産の売却、遺産相続の手続き、訴訟対応など、日常生活自立支援事業では対応できない広範な法律行為を代理・代行することが可能です。
任意後見制度
ご本人が元気なうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、誰にどのような支援をしてもらいたいかを契約で決めておく制度です。
利用対象者は、ご自身の「事理弁識能力」(物事を判断する能力)が不十分、著しく不十分、または欠けている方とされています。 費用は、申立て費用、登記費用、鑑定費用(必要な場合)、そして後見人等への報酬などが発生します。後見人等への報酬は、ご本人の財産状況などに応じて家庭裁判所が決定します。
あなたに合うのはどちら?両制度のメリット・デメリットを徹底比較

二つの制度の概要を理解したところで、それぞれのメリットとデメリットを比較してみましょう。
日常生活自立支援事業のメリット
- 身近な窓口で相談しやすい
各地域にある社会福祉協議会が窓口となり、専門員がご自宅を訪問して相談に応じてくれます。 - 金銭管理の負担軽減
預貯金の出し入れや公共料金、家賃などの支払いを代行してくれるため、ご本人やご家族の日常的な金銭管理の負担が大幅に軽減されます。利用料が安価であることも大きなメリットでしょう。 - 福祉サービスの利用をサポート
複雑な介護保険サービスやその他の福祉サービスの情報提供から手続きまで支援してくれるため、必要なサービスを適切に利用できるようになります。
日常生活自立支援事業のデメリット
- 法的権限の限界
日常生活の範囲に限定されており、不動産の売却、遺産相続の手続き、訴訟対応など、法律行為を伴う複雑な問題には対応できません。 - 保証人などにはなれない
介護施設などに入居する際に求められる身元引受人や身元保証人になることはできません。 - 有償サービスであること
相談や計画作成は無料ですが、サービス自体には安価であるものの費用が発生します(生活保護受給者を除く)。
成年後見制度のメリット
- 広範な法的支援
財産管理全般(不動産や高額な資産の管理、売却など)、遺産相続の手続き、悪徳商法の被害からの保護、訴訟対応など、あらゆる法律行為を後見人等が行うことができます。 - 強力な保護・支援
ご本人の判断能力が著しく低下している場合でも、後見人等がご本人に代わって契約を結んだり、不利益な契約を取消したりする強力な権限を持つため、ご本人を法的にしっかり保護できます。 - 身元保証人の代替
多くの介護施設や病院で、成年後見人がいることで身元引受人や身元保証人を別途立てる必要がなくなる場合があります。 - 金融機関での信頼性
裁判所が選任する制度であるため、金融機関などでの信頼性が高く、手続きがスムーズに進みやすいです。
成年後見制度のデメリット
- 手続きの複雑さと時間
申立てには多くの書類作成や家庭裁判所とのやり取りが必要で、制度利用開始までに時間がかかる場合があります。 - 費用が発生
申立てにかかる費用や、後見人等への報酬(原則としてご本人の財産から支払われる)が発生します。 - 柔軟性に欠ける場合も
裁判所の監督下で行われるため、ご本人の意思を尊重しつつも、後見人等が常に裁判所の許可を得る必要があり、柔軟な対応が難しいと感じられることもあります。
伊丹市周辺(尼崎市・西宮市・宝塚市・川西市など)にお住まいの方へ
兵庫県内の伊丹市、尼崎市、西宮市、宝塚市、川西市にお住まいの方々も、これらの制度を安心して利用することができます。
「日常生活自立支援事業」を利用したい場合は、まず各市町村の社会福祉協議会、または地域包括支援センターにご相談ください。これらの機関が、地域における高齢者福祉の重要な窓口となっており、サービス内容や申し込み方法について詳しく教えてくれます。
「成年後見制度」を利用する際は、行政書士や司法書士などの専門家や地域包括支援センターなどにご相談いただくのがスムーズです。
まとめ

「日常生活自立支援事業」と「成年後見制度」は、それぞれ異なる目的と特性を持つ重要な制度です。ご本人の判断能力の状況、財産の規模、必要な支援の種類、ご家族の状況などによって、どちらの制度が最も適しているかは大きく異なります。
ご自身やご家族の「これから」を安心して過ごすために、判断能力の低下に備えることは非常に重要です。早めに専門家である行政書士・社会福祉士にご相談いただくことで、それぞれの制度の特性を理解し、後悔のない最適な選択ができるようになります。
まずは、お気軽にお近くの行政書士や社会福祉士にご相談ください。皆様の「安心」をサポートいたします。


