遺産分割で家族が「争族」になる落とし穴とは?

遺産分割協議_相続 遺言・相続

「相続なんて、うちには関係ない」そう思っていませんか? もしご家族に万が一のことがあった時、遺言書が残されていないと、残されたご家族は「遺産分割協議」という、非常にデリケートで複雑な手続きに直面することになります。

一見するとシンプルな話し合いに思えるかもしれませんが、実はこの遺産分割協議こそが、家族関係を永遠に引き裂く「争族」の引き金になりかねないのです。今回は、遺産分割協議の知られざる落とし穴と、それを回避するための賢い対策について、伊丹市周辺(伊丹・尼崎・西宮・宝塚・川西)で地域密着で活動する行政書士の視点から解説いたします。

遺産分割協議とは?

相続_言い合い

遺産分割協議」とは、亡くなった方(被相続人)が遺言書を残していなかった場合に、法定相続人全員で、誰がどの遺産をどれくらいの割合で相続するかを話し合い、合意することです。この話し合いで全員が合意し、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残し、相続人全員が署名と実印での押印、さらに印鑑証明書を添付することで、初めて預貯金の解約や不動産の名義変更といった相続手続きを進めることができるようになります。

遺産分割協議が「争族」になる5つの落とし穴

なぜ、遺産分割協議がこれほどまでにトラブルを引き起こしやすいのでしょうか。そこには、多くの人が見落としがちな、いくつかの「落とし穴」が存在します。

1. 全員同意の壁:たった一人の反対で止まる手続き

遺産分割協議は、相続人全員の同意がなければ成立しません。たとえ少額の遺産であっても、一人でも納得しない人がいれば、手続きは滞り、何ヶ月、何年もの間、解決しないまま放置されてしまう可能性があります。関係性が希薄な親族や、遠方に住んでいる相続人がいる場合、連絡を取ること自体が困難になるケースも少なくありません。

2. 複雑すぎる相続人・財産調査:時間と労力の膨大な消費

遺産分割協議を始めるには、まず「誰が相続人なのか」を確定し、次に「どんな財産がどれだけあるのか」をすべて洗い出す必要があります。

  • 相続人調査の困難さ
    相続人全員を特定するためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本などを収集しなければなりません。転籍や婚姻・離婚を繰り返している場合、何十通もの戸籍をたどることもあり、非常に手間がかかります。特に、被相続人に子供がおらず、兄弟姉妹やその子供(甥・姪)が相続人となるケースでは、さらにその父母や亡くなっている兄弟姉妹の戸籍まで遡って調べる必要があり、膨大な時間と労力がかかります。

  • 財産調査の困難さ
    預貯金、不動産、株式など、すべての財産を正確に把握することは容易ではありません。時には、家族が知らない口座や隠れた財産が見つかることもあり、調査が難航することもあります。

3. 特殊な事情がある相続人の存在:手続きがさらに煩雑に

相続人の中に特定の事情を抱える人がいる場合、遺産分割協議はさらに複雑化します。

  • 行方不明の相続人
    相続人の中に連絡が取れない、あるいは行方不明の人がいる場合、その人を含めた全員での話し合いができません。この場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てるか、「失踪宣告」を行う必要があり、解決までに多くの時間と費用がかかります。
    過去記事:音信不通の相続人がいる場合の遺産分割

  • 判断能力がない相続人(認知症など)
    相続人に認知症などで判断能力がない人がいる場合、その人が遺産分割協議に参加することはできません。この場合も、家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申し立てる必要があり、手続きがさらに煩雑になります。
    過去記事:成年後見制度の全体像と将来への賢い備え方

  • 未成年者
    相続人の中に未成年者がいる場合、その子は単独で法律行為を行うことができません。もし親権者(親)も相続人である場合、親と子の間で利益が相反するため、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てなければならず、時間と手間がかかります。

4. 感情的な対立:親族関係が破壊されるリスク

「うちは仲が良いから大丈夫」そう思っていても、いざ相続となると、金銭が絡むことで感情的な対立が生じ、「争族」に発展してしまうケースは後を絶ちません。

  • 介護の貢献度
    長年介護をしてくれた子供がいる場合、その貢献を考慮して多く遺産を分けたいと考える親の気持ちと、他の子供たちの「平等に分けるべきだ」という主張がぶつかることがあります。

  • 過去の生前贈与
    生前に特定の人に多額の贈与があった場合、「その分を考慮すべきだ」という意見と「もう済んだことだ」という意見で対立が生じ、話し合いが難航することがあります。

  • 複雑な家族関係
    前妻との間に子供がいる場合、現配偶者や現配偶者との子供は、ほとんど会ったことのない前妻の子供とも話し合いをしなければならず、感情的な溝が深まることがあります。また、子供がいない夫婦の場合、亡くなった配偶者の親や兄弟姉妹が相続人となり、これまでの関係性によっては話し合いが困難になることもあります。
    過去記事:再婚された方が遺言を書いた方が良い理由とは?

5. 曖昧な遺言の「落とし穴」:かえって混乱を招くことも

「遺言書があるから安心」と思っていても、自分で書いた自筆証書遺言の場合、書き方を間違えたり、内容が曖昧だったりすると、無効になったり、相続手続きに支障が出たりすることがあります。例えば、「自宅の住所だけを書いて、不動産の特定が不正確だった」「『託す』など、法的な効力のない言葉を使ってしまった」「普通預金は書いたが定期預金に触れていなかった」といったミスは、相続手続きを複雑にし、かえって遺族を困らせる原因となります。

「遺言書」という解決策:残された家族を守る最大のメリット

自筆証書遺言ブログ

これらの遺産分割協議の落とし穴を避けるために最も効果的なのが、「遺言書」を事前に作成しておくことです。遺言書があるだけで、残されたご家族の負担は劇的に軽減されます。

1. スムーズな手続き:遺産分割協議が不要に

有効な遺言書があれば、原則として遺産分割協議は不要となり、遺言書の内容に従って遺産を分けることができます。これにより、相続人全員の同意を得る必要がなくなり、手続きが格段にスムーズに進みます。例えば、預貯金の解約や不動産の名義変更も、遺言書に基づいて速やかに行うことが可能になります。

2. 故人の意思を確実に実現:望む人に望む財産を

遺言書を作成することで、法定相続分に縛られず、ご自身の望む形で財産を分け与えることが可能になります。

  • 法定相続人以外への遺贈
    お世話になった友人や内縁の配偶者、特定の団体など、法定相続人ではない人に財産を遺したい場合、遺言書がなければその願いは叶いません。遺言書で明確に指定することで、確実に財産を渡すことができます。

  • 特定の財産の指定
    「自宅は長男に、アパート経営は次女に」など、特定の財産を特定の相続人に引き継がせたい場合、遺言書で明記することで、後のトラブルを防ぎ、事業の継続などもスムーズに行えます。

  • 相続分の調整
    介護で尽くしてくれた子供に多く財産を渡したい、といった場合も、遺言書で指定することで、ご自身の意思を反映させた公平な分配が実現できます。

3. トラブルを未然に防止:「争族」回避の切り札

遺言書は、残されたご家族が「争族」に巻き込まれることを防ぐための、最も強力な手段です。財産の多寡にかかわらず、遺言書がないことで発生する感情的な対立や手続きの遅延は、ご家族にとって大きな負担となります。遺言書を通じて、ご自身の想いや財産分配の理由を明確に伝える「付言事項」を記載することも、ご家族の理解を深め、後の争いを避ける上で非常に有効です。

4. 遺言執行者の活用:手続きの負担を軽減

遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実現するために、遺産の管理や名義変更などの手続きを単独で行う権限を持つ人です。

  • 手続きの一元化
    遺言執行者がいれば、各金融機関での預貯金解約や不動産の名義変更など、煩雑な手続きを遺言執行者一人が進めることができます。これにより、相続人全員が印鑑証明書を用意したり、銀行に同行したりする手間が省けます。

  • 公平性の担保
    相続人ではない第三者(弁護士や司法書士、行政書士などの専門家)を遺言執行者に指定することで、相続人の利害関係に左右されず、中立的な立場で手続きを進めることができ、トラブルを未然に防ぎます。

  • 特定の業務の遂行
    非嫡出子の認知や相続廃除など、遺言執行者でなければ行えない特定の法的手続きもあります。

遺言書の種類と選び方:確実性を重視するなら

遺言‗種類

遺言書には主に2つの種類があります。

・【自筆証書遺言】
ご自身で全文を手書きする遺言書です。

メリット: 費用がかからず、手軽に作成でき、内容を秘密に保てます。

デメリット: 形式不備で無効になるリスクや、紛失・改ざんの恐れがあります。また、遺言者の死後、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です(一部例外あり)

法務局における遺言書保管制度: 2020年7月から始まったこの制度を利用すれば、自筆証書遺言を法務局が保管してくれるため、紛失や改ざんのリスクを減らせ、検認も不要になります。ただし、法務局は内容の有効性を保証するものではありません。

・【公正証書遺言】
公証役場で公証人が作成する遺言書です。

メリット: 公証人が関与するため、形式不備で無効になるリスクが極めて低く、確実性が高いです。原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。また、検認手続きも不要です。

デメリット: 作成に費用がかかり、公証人と証人(2名以上)に内容を知られます。証人の手配も必要です。

確実性を重視し、将来のトラブルを確実に避けたいのであれば、公正証書遺言の作成を強くお勧めします。

行政書士という専門家にご相談を:後悔しない相続のために

「遺言書が重要だということは分かったけれど、自分で書くのは不安…」 「どのような内容にすれば、家族が揉めずに済むのだろう?」

ご安心ください。私たち行政書士は、遺言書作成の専門家です。特に、遺産分割協議でよく見られる「落とし穴」を理解しており、お客様のご事情に合わせて、法的効力があり、かつご家族間の争いを未然に防ぐための最適な遺言書作成をサポートいたします。

遺言書の作成は、単に財産の分け方を記すだけでなく、ご自身の人生の集大成として、大切なご家族へのメッセージを残すことでもあります。特に、伊丹市周辺(伊丹・尼崎・西宮・宝塚・川西)にお住まいの皆様で、複雑な家族関係や特殊な財産構成をお持ちの方、あるいは将来の「争族」がご心配な方は、ぜひ一度、当事務所(ことのは行政書士・社会福祉士事務所)にご相談ください。

「遺言執行者」の指定を含め、手続きがスムーズに進むよう、専門家の立場からきめ細やかにサポートいたします。後悔しない相続のために、ぜひ生前の対策を検討しましょう。

まとめ:安心の相続へ

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遺言書がない場合の遺産分割協議は、残されたご家族にとって大きな負担とトラブルの種となりかねません。相続人全員の同意が必要であること、複雑な相続人・財産調査が必要であること、行方不明者や判断能力がない相続人、未成年者がいる場合の煩雑な手続き、そして何よりも感情的な対立による「争族」のリスクは、決して無視できるものではありません。

しかし、遺言書を事前に作成しておくことで、これらのリスクを大幅に軽減し、ご自身の意思を確実に反映させ、残されたご家族が円満に相続を終えられるよう導くことができます。特に、公正証書遺言の活用や、遺言執行者の指定は、より確実でスムーズな相続を実現するための有効な手段です。

ご自身の相続でご家族が困らないよう、また「争族」という悲しい事態を避けるためにも、遺言書作成は「いつか」ではなく「今」始めるべき生前対策です。当事務所は、伊丹市周辺(伊丹・尼崎・西宮・宝塚・川西)の皆様の相続に関する不安を解消し、安心の未来を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

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