障がいのある子・兄弟の「親なき後」に遺言書が絶対必要な理由

障がい_家族_遺言 障がい・親なき後の備え

ご家族に障がいのあるお子さんや兄弟姉妹がいらっしゃる皆さんは、「もしも自分に何かあったら、この子は、この兄弟はどうなってしまうのだろう」という、「親なき後問題」に漠然とした不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。障がいのある方の生活サポートはもちろん、金銭管理や各種手続きなど、親御さんや兄弟姉妹の方が担ってきた役割は多岐にわたります。

こうした将来への不安を解消し、大切なご家族が安心して生活を送れるようにするための、最も重要な準備の一つが「遺言書」の作成です。遺言書は単に財産の分配を決めるだけでなく、障がいのあるご家族の未来を守るための強力なツールとなります。

今回は、障がいのあるお子さんや兄弟がいるご家庭に遺言書がなぜ必要なのか、その具体的な理由とメリット・デメリット、そして関連制度について、伊丹・尼崎・西宮・宝塚・川西エリアの行政書士の視点から詳しく解説いたします。

なぜ障がいのある子や兄弟のために遺言書が必要なのか?

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遺言書を作成することで、以下のような多角的なメリットが得られます。

①遺産分割のトラブルを未然に防ぐため

遺言書がない場合、故人の財産は法律で定められた割合(法定相続分)で相続人全員が協議して分け合うことになります(遺産分割協議)。しかし、家族構成やこれまでの経緯によっては、法定相続分通りの分割が適切でないと感じるケースも少なくありません。

遺言書があれば、あらかじめ故人の意思に基づいて誰にどの財産をどれだけ渡すかを明確に指定できるため、親族間での不必要な争いを防ぎ、円満な相続を実現できます

②判断能力が不十分な相続人がいても手続きを円滑に進めるため

障がいのあるお子さんや兄弟が、重い知的障害や精神障害により十分な判断能力を有していない場合、遺産分割協議に参加することができません。この場合、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要があり、これには時間も費用もかかります。

成年後見人が選任されると、その成年後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加することになります。しかし、成年後見人は本人の財産を守る義務があるため、他の相続人に対し遺留分(法律で保障された最低限の相続割合)の請求を行う可能性があります。これにより、他のご家族が困ってしまう事態も考えられます。

遺言書があれば、遺産分割協議そのものが不要となるため、判断能力が不十分な相続人がいても、相続手続きを円滑に進めることができます。これにより、遺産分割協議のために成年後見人を選任する事態を避けたり、遅らせたりすることが可能です。

※例えば、父A・母B・子C(重度知的障がい者)という家族がいたとします。この場合、父Aが亡くなった際に遺言書が無いと、通常子Cには成年後見人をつける必要が出てきます。「成年後見人制度はデメリットもあるので利用したくない。父Aが亡くなった後も母Bが子Cの財産管理を引き続き行いたい」と思っても、遺言書が無いとそれが叶えられません。

③障がいのある方の生活の安定を確保するため

障がいのあるご家族の将来の生活費や医療費、介護費用など、長期にわたる経済的サポートは親御さんにとって大きな心配事です。

遺言書を通じて、障がいのあるお子さんや兄弟に特定の財産を相続させたり、その財産をどのように活用して生活を支えるかを具体的に指示することができます。これにより、親御さんが亡くなった後も、障がいのあるご家族が必要なサービスを受け、安定した生活を送れる基盤を確保できます。

④相続手続きの負担を軽減するため

遺言書がない場合、故人の銀行口座は凍結され、不動産の名義変更や売却には相続人全員の実印と印鑑証明書が必要となるなど、相続手続きは非常に煩雑になります。特に、遠方に住む相続人がいたり、連絡が取りづらい親族がいる場合は、書類の収集や手続きに数ヶ月かかることも珍しくありません。

遺言書があり、遺言執行人が指定されていれば、遺言書に基づいて不動産や預貯金の名義変更などがスムーズに行えるため、他の相続人全員の協力なしに手続きを進めることができ、残されたご家族の負担を大幅に軽減できます

遺言書の種類と選び方

遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合ったものを選ぶことが重要です。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

  • メリット
    手軽に、かつ安価で作成できる点が最大の魅力です。自宅で一人で作成できるため、費用もかかりません。

  • デメリット
    全文を自筆し、日付や氏名を正確に記載し、押印するなど、民法で定められた厳格な要件を満たさなければ無効になるリスクがあります。内容が不明確で相続手続きに支障が出る可能性や、紛失・隠匿の恐れもあります。

法務局での自筆証書遺言保管制度

自筆証書遺言のデメリットを補う制度として、法務局で自筆証書遺言を保管してもらう制度があります。これにより、紛失や隠匿のリスクを避け、検認手続きも不要となります。費用も3,900円程度と比較的安価で、自筆証書遺言の作成と保管を検討する際には、有効な選択肢となります。

公正証書遺言のメリット・デメリット

  • メリット
    公証人が法律に基づいて作成するため、形式的な不備がなく、高い確実性があります。原本は公証役場で保管されるため、紛失や偽造の心配がなく、家庭裁判所の検認手続きも不要です。専門家が関与するため、利害関係人からの無効主張も少なくなります。

  • デメリット
    作成に費用が発生し、公証役場に出向く必要があること、そして公証人や証人2名以上に内容を知られるという点が挙げられます。

遺言書と組み合わせて活用したい関連制度

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遺言書は「財産の分配」を主に指定するものですが、障がいのあるご家族の生活を包括的にサポートするためには、他の制度との組み合わせも検討が不可欠です。

①成年後見制度

判断能力が不十分な方を法的に支援する制度です。

  • 法定後見制度
    本人の判断能力が既に低下している場合に、家庭裁判所が後見人等(後見人、保佐人、補助人)を選任します。親族が候補者になることも可能ですが、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることが多いです。

  • 任意後見制度
    本人の判断能力が十分なうちに、将来の判断能力低下に備えて、あらかじめ任意後見人となる人や委任する事務の内容を契約で決めておく制度です。障がいのあるお子さんの親御さんが、親が元気なうちに子どもの将来のケアを計画するのに適しています。任意後見人の職務を監督する任意後見監督人が家庭裁判所によって必ず選任され、報酬が発生します。

②死後事務委任契約

遺言書は故人の死後の「財産の分配」について効力を発揮しますが、葬儀や埋葬、遺品整理、各種契約の解約といった「事務手続き」には効力が及びません。障がいのあるご家族だけではこれらの手続きが困難な場合、死後事務委任契約を締結することで、信頼できる人に死後の事務を委任し、故人の意思を確実に実現できます。

③財産管理委任契約・見守り契約

  • 財産管理委任契約
    身体が不自由でご自身での財産管理が難しくなったが、判断能力は十分にあるという場合に、財産管理を第三者に委任する契約です。任意後見制度への移行を見据えた「移行型」任意後見契約と組み合わせることも有効です。

  • 見守り契約
    任意後見契約を締結してからその効力が生じるまでの間に、任意後見人となる予定の人が定期的に本人と連絡を取り、健康状態や生活環境を確認し、任意後見開始の適切なタイミングを見極める契約です。これにより、せっかくの任意後見契約が適切な時期に発動しないリスクを回避できます。

④家族信託

ご自身の財産を信頼できる家族に託し、管理・運用・処分を任せる制度です。障がいのあるお子さんを受益者として、親の財産から定期的に生活費を給付するなど、柔軟な財産管理が可能です。ただし、家族信託は財産管理が目的であり、介護サービスの手配などの身上監護は保障されないため、任意後見制度との併用が効果的です。

⑤障害者扶養共済制度

親御さんが掛金を支払うことで、親の死亡または重度障がいの場合に、障がいのあるお子さんに対して終身にわたって年金が支給される公的制度です。所得控除による節税効果も期待できます。

⑥日常生活自立支援事業

認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などで判断能力が不十分な方が、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理、書類等の預かりなどの支援を受けながら地域で自立した生活を送れるよう、都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施している事業です。ただし、不動産の売却や遺産分割協議などには関与できません。

⑦生活保護

障がいのある方が、障害年金などの収入だけでは最低限度の生活を送ることが困難な場合に、国が生活費を保障するセーフティーネットです。これにより所得が低くてもグループホームなどの施設利用を十分に検討することが出来ます。

早めの準備が安心の鍵

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「遺言書は年を取ってから書くもの」というイメージがあるかもしれませんが、万が一の事態はいつ訪れるか分かりません。交通事故や急病など、予期せぬ出来事で判断能力を失ったり、亡くなったりする可能性は誰にでもあります。

特に障がいのあるご家族の将来を案じるのであれば、60歳、70歳を待たずに「とりあえずの遺言」を作成しておくことを強くお勧めします。早めに準備を始めることで、ご自身と大切なご家族の「もしも」に対する安心を確保することができます。

あなたが元気なうちに準備しておかないと後悔につながります。

専門家である行政書士に相談するメリット【伊丹周辺・尼崎・西宮・宝塚・川西エリア対応】

遺言書の作成や各種契約の準備は、法的知識が必要であり、ご自身の状況に合わせて最適な内容を検討しなければなりません。特に障がいのあるご家族の「親なき後問題」への対策は、非常に複雑で専門的な判断が求められます。

私たち行政書士は、これらの手続きに関する専門的な知識を持っています。

  • ご依頼者様のご状況を丁寧にヒアリングし、最適な遺言書の形式や内容をご提案します。
  • 自筆証書遺言作成のサポートはもちろん、公正証書遺言の原案作成や公証役場との調整もお手伝いできます。
  • 遺言書だけでなく、死後事務委任契約、財産管理委任契約、見守り契約など、関連する他の制度との組み合わせについてもアドバイスし、ご家族に合わせた包括的なプランを策定します。
  • 複雑な手続きを代行することで、ご家族の皆様の負担を軽減します。

ご自身だけで悩まず、ぜひ私たち専門家にご相談ください。伊丹・尼崎・西宮・宝塚・川西エリアにお住まいの皆様の「親なき後」への不安を解消し、大切なご家族の未来を明るくするためのサポートをさせていただきます。

まとめ

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障がいのあるお子さんや兄弟がいるご家庭にとって、遺言書は「親なき後問題」を解決し、大切なご家族の尊厳ある生活を支えるための不可欠なツールです。遺言書を作成することで、遺産を巡るトラブルを防ぎ、判断能力が不十分な相続人がいても手続きを円滑に進めることができます。相続財産の多い少ないということに関係なく作成することをお勧めします。障がいのあるご家族が安心して暮らせる環境を確保するために。

遺言書の種類や関連制度は多岐にわたりますが、ご自身の状況に合わせた最適な「親なき後」対策を立てることが何よりも重要です。早めに専門家である行政書士にご相談いただき、安心できる未来への第一歩を踏み出しましょう。

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