親の介護が始まる前に知っておきたい!遺言・後見・各種契約の基本と法的備え
「親の老後が心配」「いざという時に困らないように準備したい」――そうお考えの方へ、本記事では行政書士・社会福祉士の視点から、親の介護が始まる前に知っておきたい法的備えについて、遺言、後見制度、そして各種契約という3つの柱を軸に解説します。伊丹市、尼崎市、西宮市、宝塚市、川西市など、地域で暮らす皆さんが安心して老後を迎え、家族が協力し合える未来のために、ぜひ最後までお読みください。
介護が必要になる前に知っておきたい「法的な備え」の重要性

高齢化が進む日本において、親の介護は多くの家庭にとって避けて通れない課題となっています。経済生活、介護・保育など日常生活に支障がある際に頼るのが福祉分野であり、法的なトラブル解決が必要な際に頼るのが司法分野です。しかし、「福祉((介護))の世話にはなりたくないな」「法律家(司法)に相談するのはなんだか敷居が高いな」という一般的な印象から、これらの分野への相談をためらう方も少なくありません。
近年、高齢者医療・介護や住まいの政策の中で地域包括ケアが注目されており、地域で暮らし続けることを目指す時代になっています。しかし、経済的に余裕がなく、仕事も定着せず、借金や家族関係、近隣とのトラブルなど、複合的な課題を抱える世帯が増えています。このような場合、福祉的アプローチだけでは解決が難しく、法的支援との連携が不可欠となります。
特に、認知症などで判断能力が低下すると、預貯金の管理や介護サービスの契約、不動産の処分などが難しくなるリスクがあります。詐欺被害に遭いやすくなる可能性も高まります。親の意思がはっきりしているうちに、将来を見据えた「法的な備え」をしておくことが、本人だけでなく家族の負担軽減にもつながるのです。
3つの柱:遺言・後見・各種契約
親の介護や自身の老後に備えるための法的準備は、大きく「遺言」「後見制度」「各種契約」の3つの柱で考えることができます。
1.遺言書(家族への最後のメッセージ)
遺言書は、ご自身の財産を誰にどのように引き継ぐかを明確にするための法的な文書です。遺言書を作成する主な目的は、財産を残す人の意思を実現し、相続トラブルの発生を防止し、円滑な相続手続きを行うためです。
遺言書には主に以下の3つの種類があります:
- 自筆証書遺言: 自分で全文を書き、署名・押印するもの. 費用がかからず手軽ですが、方式不備で無効になるリスクや、紛失・偽造・隠匿のリスクがあります.
- 公正証書遺言: 公証人が関与して作成し、公証役場で保管されるもの. 費用はかかりますが、無効になる可能性が極めて低く、紛失・偽造・隠匿のリスクもほとんどありません. 司法書士である私がお勧めする形式です.
- 秘密証書遺言: 内容を秘密にしたまま、公証役場で遺言書の存在を公的に証明してもらうもの. 内容は秘密にできますが、無効となるリスクや紛失・盗難のリスクがあります.
遺言書を「絶対に」作成すべきケースは、以下のような場合です:
- 子のいない夫婦: 配偶者以外(親や兄弟姉妹)が相続人になるため、配偶者に全財産を渡したい場合に必須です.
- 相続人に未成年の子がいる: 遺産分割協議に未成年者は参加できないため、遺言があれば特別代理人の選任が不要になります.
- 相続人が多数、または行方不明者がいる: 遺言執行者を指定することで、相続人全員の協力がなくても手続きを進められます.
- 相続人同士の仲が悪い: 誰が何を相続するか明確にすることで、争いを回避できます.
- 前妻・前夫との間に子がいる: 前婚の子も相続人となるため、トラブル防止や相続分調整のために重要です.
- 内縁関係のパートナーや連れ子など、法定相続人以外に財産を渡したい: 遺言がなければ財産を渡せません.
- 家族に相続手続きの負担をかけたくない: 遺言執行者を指定することで、相続手続きをスムーズに進められます.
- 会社を経営している: 株式の承継先を明確にし、会社の存続を助けます.
遺言書には、法的な効力を持つ「遺言事項」の他に、家族への感謝や遺言の作成理由などを記載する「付言事項」を添えることも可能です。これは法的な拘束力はありませんが、家族の理解を深め、争いを避ける上で非常に有効です. ただし、遺留分という、特定の相続人(配偶者、子、直系尊属)に保障された最低限の相続割合がある点には注意が必要です。遺留分を侵害する内容の遺言は、トラブルの原因となる可能性があります。
2.成年後見制度(判断能力が低下した時の生活を守る)
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を支援する公的な制度です。財産管理や、入院・施設入所の手続き、介護保険契約など、本人の法律行為を代行します。ただし、入浴や着替えの補助といった直接的な介護や看護は成年後見人の職務範囲外です.
成年後見制度には2種類あります:
- 法定後見制度: すでに判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所が後見人を選任します。
◦ 【デメリット】
後見人を自分で選べず、裁判所が選任します.。親族が候補者であっても、必ずしも選ばれるとは限りません。財産の保全が重視されるため、積極的な資産運用や相続税対策はできません。自宅不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です。
- 任意後見制度: 判断能力が十分なうちに、将来、判断能力が低下したときに備えて、信頼できる人(任意後見受任者)と公正証書で契約を結び、後見人になってもらう制度です。
◦ 【メリット】
▪ 後見人を自分で選べる: ほぼ確実に、本人が希望する人を後見人に指定できます. 親族間のトラブルを避ける対策にもなります。
▪ 希望する生活を実現できる: 将来、どのような生活を送りたいか、どのような施設に入居したいかなどを契約で具体的に定めておくことができます。伊丹市周辺の施設など、具体的な場所の希望も記載可能です。
▪ 居住用不動産の処分が柔軟: 自宅不動産の売却に家庭裁判所の許可が不要なため、法定後見より柔軟な対応が可能です。
▪ 資産活用: 法定後見より資産活用ができる可能性があります。
◦ 【デメリット】
▪ 取消権がない: 本人が不利益な契約を結んでしまっても、任意後見人にはその契約を取り消す権限がありません。
▪ 任意後見監督人が必須: 任意後見が開始されると、必ず家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見人の職務を監督します. そのため、監督人への報酬が継続的に発生します。
近年は、施設入所の際に身元保証人の提出を求める施設が約9割を占めますが、成年後見人は身元保証人(特に金銭保証)にはなれません。これは、後見人の職務が本人の財産保護であるのに対し、身元保証は本人の代理で支払い義務を負うなど、利益が相反する可能性があるためです。
※身元保証人がいない方でも、任意後見人や法定後見人がいれば入所・入居できる施設も多くあります。
高額を支払ってまで身元保証会社に依頼して保証人をつける必要が無いケースも多々ありますので悪徳業者にはご注意を。
3.各種契約(空白期間と死後をカバー)
任意後見契約だけではカバーしきれない「空白の時間」(契約締結から効力発生まで)や「死後の事務」を補完するために、以下の契約を併用することが推奨されます。
- 財産管理委任契約
判断能力が十分なうちから、信頼できる人に預貯金の管理、公共料金の支払い、収入支出の管理など、日常的な財産管理を任せる契約です。任意後見契約と同時に締結することで、判断能力の低下前から任意後見開始までの一貫したサポートが可能です(移行型任意後見契約)。 - 見守り契約
任意後見契約の効力が発生するまでの間、任意後見受任者が定期的に本人と連絡を取り合い、健康状態や判断能力の状況を確認する契約です。これにより、適切なタイミングで任意後見を開始するための申し立てを行うことができます。 - 死後事務委任契約
本人が亡くなった後の葬儀、納骨、医療費や施設費の精算、遺品整理、行政手続きなどを、信頼できる人に委任する契約です。成年後見人の権限は本人の死亡時に終了するため、死後の手続きは別途この契約で定める必要があります。 - 家族信託
判断能力があるうちに、自身の財産(不動産や預貯金など)を信頼できる家族に「信託」し、その管理・運用・処分を任せる制度です。財産の「所有権」が受託者(家族)に移るため、本人の判断能力が低下した後も、受託者の判断で柔軟な資産活用が可能になる点が大きな特徴です。ただし、身上監護の機能はなく, 介護サービス契約などの手続きは別途対応が必要です。
地域で支え合う介護と法務

親の介護や自身の老後に関する不安は、一人で抱え込まず、地域社会のサポートも積極的に活用することが重要です。
以下は一例です。これ以外にも相談できる所はたくさんあります。そのことについてはまた別の記事で。
- 地域包括支援センター
高齢者の総合相談窓口であり、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が、保健・医療・福祉の面から高齢者の生活を包括的に支援しています。介護予防や権利擁護、地域の支援体制づくりなども担い, 要介護認定の申請やケアマネジャー(介護保険サービスの連絡調整をしてくれる人)の調整なども行います。伊丹市や尼崎市やなど、各自治体に複数設置されていますので、まずは気軽に相談してみましょう。相談料などもかかりません。どこにあるのかわからなければ、市区町村役場にお問い合わせください。 - 社会福祉協議会
地域住民、事業者、ボランティア、利用者など様々な立場の人々が協力し、地域福祉を推進する組織です。日常生活自立支援事業として、認知症などにより判断能力が低下した方の金銭管理や書類の預かりといった支援も行っています。
福祉と司法の連携は、「顔の見える関係づくり」が非常に重要です。介護の問題が法的なトラブルと複合するケースは少なくありません。このような複雑な問題に対しては、福祉分野の専門家と司法分野の専門家が連携し、具体的な支援を分担したり、アドバイスを提供したりすることが不可欠です。伊丹、宝塚、川西といった地域でも、こうした専門職間の連携が、住民の皆様の暮らしを支える上で欠かせません。
まとめ:専門家と共に安心できる未来を
親の介護は、経済的、身体的、精神的に大きな負担となる可能性があります。在宅介護と施設介護にはそれぞれメリット・デメリットがあり、介護費用の軽減制度も存在しますが、これらは原則として「申請が必要」です。
人生100年時代、いつまでも安心して自分らしい暮らしを続けるためには、事前の準備が何よりも大切です。本記事でご紹介した遺言書、成年後見制度、そして財産管理委任契約や死後事務委任契約などの各種契約は、いざという時に本人や家族が困らないための重要な「法的備え」です。
私自身、行政書士として法的側面から、また社会福祉士・ケアマネジャーとして福祉的側面から、皆様の様々なご相談に対応しています。地域における複合的な課題に対応し、最適な解決策をご提案できるよう、法務と福祉の両面からサポートいたします。
終活や、遺言書の作成、成年後見制度の利用、財産管理、そして死後事務に関することなど、どんなに些細なことでも構いません。伊丹市、尼崎市、西宮市、宝塚市、川西市といった地域の皆様が安心して老後を迎えられるよう、ぜひ一度、当事務所(ことのは行政書士・社会福祉士事務所)にご相談ください。




