突然の訃報。家族や親族を亡くされた悲しみの中で、遺産相続という問題に直面することがあります。もしあなたが現在、生活保護を受給している場合、「遺産を相続したら生活保護はどうなるの?」「申請が打ち切られてしまうのでは?」といった不安を抱えるのは当然のことでしょう。
生活保護は、生活に困窮されている方のセーフティーネットとして私たちの生活を支えてくれる大切な制度です。しかし、制度が複雑で分かりにくいと感じる方も少なくありません。このブログ記事では、生活保護受給中に遺産相続が発生した場合の制度の仕組み、注意すべき点、そして困ったときに頼れる専門家の情報について、わかりやすく解説します。
特に、伊丹市、尼崎市、西宮市、宝塚市、川西市といった阪神間にお住まいで、生活保護の申請や相続でお悩みの方にも役立つ情報をお届けします。
生活保護ってどんな制度?基本をおさらい
生活保護制度は、日本国憲法第25条で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を、国が国民に保障するための制度です。病気やケガ、高齢、失業など、さまざまな事情で生活に困窮した人々に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、自立を助長することを目的としています。
この制度の大きな特徴は、要件を満たす限り、すべての国民が無差別平等に利用できるという点です。多くの人が「厳しい条件があるのでは?」と思う方も多いかと思いますが、厚生労働省が定める「最低生活費(生活するために最低限必要な費用)」よりもあなたの世帯の収入が低ければ、その差額が生活保護費として支給されるという、実はシンプルな仕組みです(収入がなければ最低生活費と同額が支給されます)。ただし、「すぐに換金できる資産がない」などの条件はあります。
残念ながら、日本では生活保護の受給資格があるにもかかわらず、制度を利用できていない人が多く存在します。受給資格がある世帯の約80%が利用しておらず、これはヨーロッパ諸国が60%〜90%の利用率であることと比較すると非常に低い数字です。
生活保護受給中に遺産を相続したらどうなる?

相続することはできるのか?
生活保護受給者であっても遺産を相続することは可能です。遺産を相続する権利は、民法で全ての人に認められている法律上の権利であり、生活保護の受給の有無によって制限されることはありません。
ただし、遺産を相続したことであなたの生活状況が変化したとみなされ、生活保護の受給が停止されたり、廃止されたりする可能性はあります。
「停止」と「廃止」の違い
- 保護の停止:一時的に生活保護の支給が停止される状態を指します。臨時的な収入の増加などによって一時的に保護が必要なくなったものの、おおむね6ヶ月以内に再び保護が必要な状態になると予想される場合に適用されます。この場合、再度困窮すれば支給が再開されます。
- 保護の廃止:生活保護の支給が恒久的に廃止される状態を指します。臨時的な収入の増加によって、おおむね6ヶ月を超えて保護が必要ない状態が継続すると予想される場合に適用されます。廃止された後に再び保護が必要となった場合は、再度申請し審査を受ける必要があります。
具体的にいくらの遺産を相続したら停止や廃止になるかという明確な基準はありませんが、一般的には、相続した遺産が生活保護費の約6ヶ月分を上回る場合は、廃止となる可能性が高いと言えるでしょう。
自治体の判断にもよるところだと思いますので、福祉事務所等にいるケースワーカーに確認しましょう。
相続しても生活保護受給を続けられるケース
すべての相続が生活保護の停止・廃止につながるわけではありません。
- 少額の財産の場合
相続した財産が少額であり、それを活用しても最低限度の生活を維持できないと判断されれば、引き続き生活保護を受給できる可能性が高いです。例えば、1ヶ月の生活費に満たない程度の場合など。 - 居住用不動産の場合
亡くなった親名義の家に住んでいて、その家を相続した後も引き続き住み続ける場合など、その家が生活に必要不可欠な財産と認められれば、生活保護を受給しながら持ち家を保有し続けることができる可能性が高いです。ただし、資産価値が高く換金可能な不動産を相続した場合は難しいでしょう。 - 相続税について
生活保護受給者であっても、遺産を相続した場合は相続税の納税義務が免除されることはありません。しかし、相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という基礎控除があるため、ほとんどのケースで相続税が発生しないことも多いです。
個々の事情によって判断が異なるため、遺産相続が発生した場合は、必ず担当のケースワーカーに相談し、報告することが重要です。
相続に関するNG行動!不正受給は絶対ダメ!

生活保護受給中に遺産相続が発生した際に、いくつかのNG行動を取ってしまうと、不正受給とみなされ、厳しいペナルティが科せられる可能性があります。
市役所・福祉事務所への報告義務
生活保護受給者には、収入、支出、その他生計の状況に変動があった場合、速やかに役所または福祉事務所長にその旨を届け出る義務があります。遺産相続によって得た財産も「収入」として扱われるため、相続した、または相続する見込みがある場合は、すぐに報告しなければなりません。
虚偽の申請や意図的な財産隠し
- 遺産を受け取れることを知っていたのに生活保護を申請する
近いうちに遺産を受け取れることがわかっていたにもかかわらず、それを隠して生活保護の申請を行った場合、虚偽の申請とみなされ、生活保護が廃止される可能性があります。 - 相続財産を意図的に減らす
生活保護が打ち切られるのを避けるために、合理的な理由なく相続財産を意図的に減らす行為(例えば、遺産分割協議で自分の取り分を不当に少なくする、財産の名義を変えるなど)も、不正受給とみなされる可能性があります。生活保護制度は、利用し得る資産を最大限活用することが前提だからです。
不正受給のペナルティ
不正受給と判断された場合、受け取った生活保護費の全額または一部の返還請求を求められます。さらに、その徴収額に徴収金が上乗せされることもあります。悪質なケースでは、詐欺罪として刑事告訴され、逮捕される可能性もあります。
「相続放棄」は生活保護受給中にできる?
遺産の中に借金が含まれている場合などは「相続放棄」を検討する方が多いでしょう。生活保護受給者であっても、相続放棄をすること自体は可能です。相続放棄は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てることで、被相続人の財産や負債を一切引き継がない手続きです。
しかし、生活保護の継続を目的とした相続放棄は、原則として認められません。これは、生活保護の受給要件である「その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用すること」に反すると判断されるためです。利用できる資産があるにもかかわらず、意図的にそれを手放す行為は、生活保護の制度趣旨から外れると考えられます。
相続放棄の判断は、遺産の金額や内容、受給者の生活状況によって複雑に変わってきます。自己判断で手続きを進めるのは非常に危険です。
まずは専門職へ相談を!

生活保護受給中の相続は、専門的な知識と適切な対応が求められる複雑な問題です。自己判断で進めると、生活保護が打ち切られたり、不正受給とみなされたりするリスクがあります。
困ったときは、ためらわずに専門家へ相談しましょう。
①ケースワーカー
現在生活保護を受給している方は、まず担当のケースワーカーに相談するのが最善です。ケースワーカーは、生活保護制度に精通しており、遺産相続があなたの生活保護受給にどのような影響を与えるかについて、具体的なアドバイスをしてくれます。福祉事務所への報告義務についても、適切な手続きを案内してくれるでしょう。それぞれの市町村の窓口にて相談してみてください。
②弁護士・司法書士
遺産分割の話し合いがまとまらない、相続放棄を検討している、など法的なサポートが必要な場合は、弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談することをおすすめします。
弁護士や司法書士は、相続に関する法的な観点から的確なアドバイスを提供し、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更登記、相続放棄の手続きなど、複雑な手続きを代行してくれます。
特に経済的に困難な状況にある方のために、法テラス(日本司法支援センター)という、弁護士費用を無利息で立て替えてくれる民事法律扶助制度制度があります。弁護士や司法書士の紹介も行っています。
③行政書士
生活保護の申請自体に不安がある、役所での対応に疑問を感じる、といった場合は、行政書士に相談することも有効です。当事務所では、生活保護申請のサポートや申請同行(付き添い)を行っています。
もし、福祉事務所の窓口で「まだ若いから働けるでしょ」「家族に援助を頼め」などと言われ、申請をさせてもらえない(いわゆる「水際作戦」)という不当な対応を受けた場合は、諦める必要は全くありません。このような行為は違法であり、行政書士等が同行することで、不当な対応を抑制し、適法に申請が受理されるよう支援します。
まとめ

生活保護受給中の遺産相続は、受給資格や受給額に大きな影響を与える可能性があります。相続財産の額や内容によっては生活保護が停止・廃止されたり、不正受給とみなされたりすることもあるため、決して自己判断せず、専門職への早期相談が何よりも重要です。まずは担当のケースワーカーに相談するべきでしょう。
あなたの居住地のケースワーカーを始め、弁護士、司法書士、行政書士といった専門家は、あなたの状況に応じた適切なアドバイスとサポートを提供してくれるでしょう。伊丹・尼崎・西宮・宝塚・川西といった地域にお住まいの方も、お近くの福祉事務所や士業事務所などに相談してみましょう。専門家の力を借りて、安心して手続きを進めてください。ためらわず一歩踏み出すことで、あなたやあなたの家族の生活を守ることが出来ます。

