音信不通の相続人がいる場合の遺産分割

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相続は、大切なご家族から財産を受け継ぐ重要な手続きですが、中には予期せぬ困難に直面するケースもあります。その一つが、音信不通の相続人がいる場合です。伊丹市周辺(尼崎市、西宮市、宝塚市、川西市)にお住まいの皆さまも、もしもの時に備えて、このようなケースでの遺産分割方法について知っておきましょう。

行政書士として、皆さまが安心して相続手続きを進められるよう、音信不通の相続人がいる場合の遺産分割方法とそのメリット・デメリット、そして専門家にご相談いただくことの重要性について解説します。

「相続人とは何か?」ということについては下記の記事をご参考ください。

遺産分割における「音信不通の相続人」がなぜ問題になるのか

相続_疑問

「音信不通の者がいるのであれば、その人を無視して相続手続きをやればいいんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、民法上そうはいきません。

遺産は、亡くなった方(被相続人)の財産を、法律で定められた相続人(法定相続人)が受け継ぎます。遺言書がない場合、この財産を「誰が」「何を」「どれだけ」受け取るかを決めるためには、法定相続人全員での話し合い(遺産分割協議)と合意が必要となります。

この「全員の合意」が大きな壁となるのが、音信不通の相続人がいるケースです。連絡が取れない、あるいはそもそも連絡先が分からない相続人がいると、話し合いができないため、遺産分割協議は成立せず、相続手続きが停止してしまうことになります。最悪の場合、何ヶ月、何年にもわたって手続きが進まないといった事態も発生しかねません。

音信不通の相続人がいる場合の遺産分割方法

遺産分割協議が進まない状況を解決するためには、いくつかの方法が考えられます。

遺言書がある場合:最もスムーズな解決策

最も推奨されるのは、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことです。遺言書があれば、原則として遺産分割協議は不要となり、遺言書の内容に従って財産を承継できます。

【メリット】

  • 遺産分割協議が不要になるため、音信不通の相続人との連絡や合意形成の必要がありません。
  • 相続手続きが円滑に進むため、時間や手間、精神的負担を大幅に軽減できます。
  • 被相続人の明確な意思が反映されるため、残された家族間の無用な争いを防ぐことができます。
  • 特定の財産を特定の人物に譲りたい、法定相続人以外の人に財産を遺したいといった個別の希望を実現できます
【デメリット】

・当然ながら、遺言書がなければこの方法は使えません。生前に準備しておく必要があります。
・遺言書の内容によっては、遺留分(一定の相続人に保証されている最低限の相続分)を侵害する可能性があり、その場合、遺留分権利者から金銭の請求を受ける可能性があります。ただし、兄弟姉妹には遺留分がありません。

遺言書がない場合:裁判所を介した手続き

遺言書がない場合でも、音信不通の相続人がいるからといって相続を諦める必要はありません。しかし、その場合は家庭裁判所を介した手続きが必要となり、時間や手間がかかる可能性があります。

  • 不在者財産管理人の選任
     音信不通の相続人がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。管理人は、その不在の相続人の代理として遺産分割協議に参加します。

    ◦ 【デメリット】
    * 選任手続きに時間と費用がかかります。
    * 選任された不在者財産管理人は、不在者の利益を保護する義務があるため、原則として法定相続分を主張することになり、他の相続人が望むような遺産分割ができない可能性があります。

  • 失踪宣告の申し立て
    音信不通の相続人が7年以上行方不明の場合、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告が認められると、その相続人は法律上死亡したものとみなされ、遺産分割協議から外れることができます。

    ◦【 デメリット】
    * 手続きに非常に長い時間がかかる可能性があります。
    *一度失踪宣告がされると、その後の撤回は困難です。

  • 遺産分割調停・審判

    相続人全員で遺産分割協議がまとまらない場合(音信不通で協議自体ができない場合も含む)、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停でも合意に至らない場合は遺産分割審判に移行し、裁判官が遺産分割の方法を決定します。

    ◦ 【デメリット】
    *時間と労力がかかります。解決まで数年かかることも珍しくありません。
    *裁判所の手続きであるため、費用も発生します。
    *調停・審判は、相続人同士の感情的な対立を深める可能性があります。

遺言書の重要性を再確認しましょう

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上記を見てわかる通り、音信不通の相続人がいる場合でも、最も有効でスムーズな解決策は、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことです。遺言書がない場合の対応は、時間的・金銭的・精神的負担が大きいからです。

遺言書には主に以下の2種類があります。

  • 自筆証書遺言
    遺言者自身が全文を手書きで作成する方法です。手軽に作成でき費用もかかりませんが、形式的な不備で無効になるリスクや、紛失・改ざんのリスクがあります。また、原則として家庭裁判所での「検認」手続きが必要となります。

    2020年7月からは、自筆証書遺言を法務局に保管する制度が始まりました。この制度を利用すると、紛失や改ざんのリスクを防ぎ、検認手続きも不要になります。

  • 公正証書遺言
    公証役場で公証人が作成する遺言書です。費用はかかりますが、形式の不備で無効になることがほとんどなく、原本が公証役場に保管されるため紛失や改ざんの心配がありません。また、検認手続きも不要です。

    公正証書遺言は、最も確実性の高い遺言書と言えるでしょう。

専門家への相談のすすめ

音信不通の相続人がいる場合の遺産分割は、非常に複雑で専門的な知識を要する手続きです。ご自身だけで解決しようとすると、多大な時間と労力、そして精神的な負担がかかるだけでなく、法的な不備により手続きがさらに滞るリスクもあります。

このような場合こそ、相続問題に強い専門家への相談が不可欠です。

  • 行政書士は戸籍謄本収集による相続人調査や、不動産・預貯金などの相続財産調査遺産分割協議書の作成支援など、幅広い書類作成や手続きのサポートが可能です。音信不通の相続人を探すための調査や、不在者財産管理人選任申立書の準備など、多岐にわたるサポートを提供できます。

まとめ

遺言_専門

音信不通の相続人がいる場合の遺産分割は、事前に遺言書を作成しておくことが最も重要であり、トラブル回避と手続きの円滑化に繋がります。もし遺言書がない場合でも、不在者財産管理人や裁判所を介した手続きによって解決の道はありますが、時間と労力がかかります。

ご自身の状況に合わせて、適切な遺言書の種類を選び、法的要件を満たした遺言書を作成することは、残されたご家族にとって大きな安心となります。ぜひ、私たち行政書士のような相続の専門家にご相談いただき、安全で確実な相続対策を進めていきましょう。

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