「うちは財産が多くないから必要ない」
「まだ元気だから大丈夫」
「家族仲が良いから争いにならない」
そう思っていませんか?しかし、遺言書がないことで、残されたご家族が予期せぬトラブルに直面したり、煩雑な手続きに追われたりするケースは少なくありません。
この記事では、遺言書の基本的な知識から、その種類、作成が必要となる具体的なケース、そして知っておきたい「遺言執行者」の役割、さらに、いつ、どのように作成・見直すべきかまで、遺言に関するあらゆる情報を分かりやすく解説します。伊丹、尼崎、宝塚、西宮、川西といった関西エリアにお住まいの方も、ぜひこの記事を参考に、ご自身の状況に合わせた遺言書作成の第一歩を踏み出しましょう
1. 遺言書とは?その意義と必要性

遺言とは、ご自身が人生をかけて築き、守ってきた大切な財産を、最も有効かつ有意義に活用してもらうために行う、遺言者の意思表示です。身分上の事項(例:非嫡出子の認知)に関する遺言もありますが、ここでは主に財産に関する遺言について説明します。
では、なぜ遺言書が必要なのでしょうか?
1-1. 相続争いの防止
世の中では、遺言がないために、親族間で相続をめぐる争いが発生することが少なくありません。これまで仲の良かった家族が、相続をめぐって骨肉の争いを起こすことは、何よりも悲しいことです。 遺言書は、このような悲劇を防止するために、遺言者自身が、残した財産の帰属を明確に定め、相続をめぐる争いを未然に防ぐという目的があります。財産の金額がそれほど大きくなくても、揉め事が起こる可能性は十分にあります。実際にそういったケースも少なくありません。遺言書があることで、残された家族が遺産分割協議で揉めることを避け、精神的な負担を軽減できます。
1-2. 相続手続きの円滑化
遺言書がない場合、不動産や預貯金などすべての相続手続きに、相続人全員の同意と実印、印鑑証明書が必要となります。相続人が遠方に住んでいたり、音信不通であったり、あるいは仲が悪かったりすると、この話し合いがまとまらず、手続きが何ヶ月、何年とストップしてしまうことがあります。最悪の場合、遺産分割調停や審判といった裁判所を介した手続きに発展し、時間も費用もかかります。
一方、遺言書があれば、原則として遺言書の内容に従って相続手続きを進めることができるため、相続人全員の同意が不要となり、手続きが非常にスムーズになります。
1-3. 自身の意思の反映
民法では、法定相続分が細かく定められています。しかし、法律で定められた割合が、必ずしもご自身の思いや家族の実情に合わないこともあります。例えば、介護で尽くしてくれた家族に多くの財産を渡したい、お世話になった第三者や慈善団体に寄付したいといった希望は、遺言書がなければ実現できません。遺言書は、「最期のメッセージを遺す」という意味合いも持ちます。
2. 遺言書の種類と特徴

遺言書には主に「普通方式」と「特別方式」が存在します。一般的に多く使用されるのは「普通方式」の遺言で、以下の3種類があります。
2-1. 自筆証書遺言
【概要と作成要件】
自筆証書遺言とは、遺言者自身が、その全文、日付、氏名を全て手書きし、押印することで作成する遺言方式です。ワープロ文字や代筆は認められません。 ただし、財産目録については2019年の民法改正により、パソコンで作成したり、預金通帳のコピーや登記簿謄本のコピーなどを添付したりすることが可能になりました。この場合、財産目録の全ページに遺言者の署名と押印が必要です。
【メリット】
- 手軽に作成できる: 紙とペン、印鑑があれば、いつでもどこでも作成できます。思い立ったらすぐに作成が可能です。
- 費用がかからない: 自分で作成する場合、公証人手数料などはかかりません。
- 内容を秘密にできる: 遺言内容を誰にも知られずに作成できます。
- 証人が不要: 公正証書遺言と異なり、証人の立ち合いは不要です。
【デメリット】
- 無効となるリスクが高い: 法律で定められた形式的要件(全文手書き、日付、氏名、押印など)を満たしていない場合、遺言書が無効になってしまう可能性が高いです。自己流で作成すると、日付が曖昧だったり、訂正方法を間違えたり、名前や押印が不足していたりするミスが多く見られます。
- 紛失・偽造・隠匿のリスク: 遺言書は通常、本人が保管するため、紛失したり、発見されなかったり、内容に不満を持つ相続人によって偽造・隠匿・破棄されるリスクがあります。
- 検認手続きが必要: 相続開始後、自筆証書遺言(法務局に保管した場合を除く)を使用するには、家庭裁判所での「検認」手続きが必須です。これには時間がかかり、遺産の解約や名義変更が遅れる原因となります。また、検認手続きには費用がかかるため、「無料」で作成できたとしても、結果的に費用が発生することになります。
※《法務局における遺言書保管制度》2020年7月10日から始まったこの制度を利用すると、法務局が遺言書の原本を保管してくれるため、紛失や改ざん、隠匿のリスクを防ぐことができます。また、この制度を利用した遺言書は、検認手続きが不要となります。 ただし、法務局は遺言書の形式的な要件(手書き、日付、氏名、押印など)はチェックしますが、内容の不明瞭さや法的な有効性については審査の対象外です。そのため、内容に不備があると、いざ手続きを行う際に問題が生じる可能性があります。
2-2. 公正証書遺言
【概要と作成要件】
公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成する遺言書です。作成には、2人以上の証人の立ち合いが必要です。遺言者が公証人に遺言の趣旨を口頭で伝え、公証人がそれを筆記し、遺言者と証人に読み聞かせたり閲覧させたりして内容の正確性を確認した後、署名・押印を行います。署名が難しい場合は、公証人が代書することも可能です。
【メリット】
- 高い確実性(無効になりにくい): 公証人という法律の専門家(法務大臣が任命)が関与し、形式・内容のチェックを行うため、無効となるリスクは極めて低いです。
- 紛失・偽造・隠匿のリスクがない: 遺言書の原本は公証役場に厳重に保管されるため、紛失、偽造、隠匿の心配がありません。
- 検認手続きが不要: 公証人によって作成・保管されるため、相続開始後の家庭裁判所での検認手続きが不要です。これにより、相続手続きを迅速に進めることができます。
- 自書が不要: 遺言者が自書する必要がないため、手が不自由な方や高齢の方でも作成が可能です。
- 専門家が法的な文章に: 遺言者が希望する内容を、公証人が法的に正確な文章にしてくれます。
【デメリット】
- 費用がかかる: 公正証書遺言の作成には、公証人手数料が発生します。費用は財産の価額や相続人の人数によって異なり、数万円程度が一般的です。
- 証人の手配が必要: 2名以上の証人の立ち合いが必須です。未成年者や推定相続人、受遺者(遺言によって財産を譲り受ける人)などは証人になれません。証人が見つからない場合は、公証役場で手配してもらうことも可能です。
- 作成に時間と準備が必要: 事前相談や戸籍謄本などの必要書類の収集、公証人との打ち合わせなどが必要となるため、作成までに数週間から数ヶ月の時間を要します。
- 内容が公証人や証人に知られる: 遺言内容が公証人や証人に知られてしまうことになります。
2-3. 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者自身が内容を作成し、封印したものを公証役場に提出して、公証人と証人がその存在を証明する方式です。 内容を秘密にできるというメリットがありますが、形式的な不備による無効リスクがある点や、検認が必要である点など、自筆証書遺言と似たデメリットを持ちます。実務上は、公正証書遺言や法務局保管制度を利用した自筆証書遺言が推奨されることが多く、あまり利用されません。
3. 遺言書作成が特に推奨されるケース

遺言書は、すべての人に役立ちますが、特に作成しておいた方が良いとされる具体的なケースがいくつかあります。
3-1. 争いが起こりやすいケース
伊丹・尼崎・宝塚・西宮・川西エリアでも、以下のようなケースで遺言書がなければ、残された配偶者が慣れない手続きや親族との交渉で困る可能性は十分にあります。
- 【夫婦間に子供がいない場合】
子供がいない夫婦の一方が亡くなると、残された配偶者だけでなく、故人の親や兄弟姉妹も相続人になります。これにより、配偶者が築き上げた財産であっても、義理の親族との遺産分割協議が必要となり、トラブルに発展しやすい傾向があります。「配偶者に全ての財産を相続させる」旨の遺言書を作成することで、配偶者単独で手続きを進め、トラブルを回避できます。
- 【法定相続人以外に財産を渡したい場合】
内縁の配偶者、子の配偶者(嫁・婿)、友人・知人、お世話になった人、慈善団体、母校などは、法定相続人ではないため、遺言書がなければ財産を受け取る権利がありません。これらの人に財産を残したい場合は、遺贈の形で遺言書に明記する必要があります。
- 【前妻(夫)との間に子供がいる場合】
再婚しており、前婚の配偶者との間に子供がいる場合、その子供も現在の配偶者や子供たちと共に相続人となります。たとえ音信不通であっても、遺産分割協議には全員の参加が必要となり、トラブルの原因となることがあります。遺言書で具体的な分配を指定しておくことで、争いを避けられます。
- 【相続人に連絡が取れない、行方不明者がいる場合】
相続人全員の合意が必要な遺産分割協議は、行方不明の相続人がいると進められません。不在者財産管理人選任や失踪宣告といった家庭裁判所での手続きが必要になり、多大な時間と手間がかかります。遺言書があれば、これらの手続きが不要となります。
- 【相続人の数が多い、関係性が複雑な場合】
代襲相続などで相続人の数が増えたり、親族関係が複雑だったりすると、全員での話し合いが困難になることがあります。遺言書によって遺産分割協議を回避し、手続きを円滑に進めることができます。
- 【相続人同士が不仲な場合】
普段から相続人同士の仲が悪い場合、遺産分割協議が紛糾し、大きなトラブルに発展しやすいです。遺言書は、このような事態を避けるための強力な手段です。
- 【特定の財産を特定の人に継がせたい場合】
自宅不動産や事業用財産など、特定の財産を特定の相続人に確実に引き継がせたい場合、遺言書で明記しておく必要があります。不動産は分割が難しく、相続争いの原因になりやすい財産の一つです。
- 【介護などで尽くしてくれた人に多く相続させたい場合】
長年介護をしてくれた子供や、その他お世話になった人に、法定相続分以上の財産を渡したい場合、遺言書にその意思を記しておくことが望ましいです。
- 【相続させたくない法定相続人がいる場合】
例えば、長年親不孝であったり、著しい非行があったりする法定相続人がいる場合、「推定相続人の排除」という制度を利用して相続権を奪うことができます。これは遺言書で行うことも可能です。ただし、遺留分という最低限の取り分が保護されるため、遺言書を作成しても完全に財産を渡さないことは難しい場合があります。
- 【未成年者や判断能力がない相続人がいる場合】
相続人の中に未成年者や認知症などで判断能力がない方がいる場合、遺産分割協議に参加できません。家庭裁判所に特別代理人や成年後見人の選任を申し立てる必要があり、手続きがより煩雑になります。遺言書があれば、これらの手続きなしに相続を進めることが可能です。
3-2. 法定相続人がいないケース
ご自身に配偶者や子、父母、兄弟姉妹などの法定相続人が一人もいない場合、遺言書がないと、最終的に財産は国のもの(国庫に帰属)となってしまいます。 お世話になった人や、特定の団体などに財産を遺したい場合は、遺言書を作成しておくことが必須です。
3-3. 相続税対策を考慮したいケース
遺産総額が多い場合、相続税が発生する可能性があります。相続税には配偶者控除や小規模宅地の特例など、節税のための様々な特例がありますが、これらの適用には申告期限内の申告が必要です。 遺言書がないと、遺産分割協議がまとまらず、申告期限(相続開始から原則10ヶ月以内)に間に合わないことがあります。期限を過ぎると、これらの特例が利用できず、追徴課税が発生するなど、多額の税金を支払うことになる可能性があります。法的に有効な遺言書があれば、遺産が円滑に分配されるため、期限内にスムーズに手続きを進めることができます。
4. 遺言書とセットで考えたい「遺言執行者」

遺言書を作成する際には、「遺言執行者」を指定することの重要性も理解しておく必要があります。
4-1. 遺言執行者とは?その役割
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、相続に関する手続きを進める人のことです。例えば、預貯金の解約や払い戻し、不動産の名義変更など、遺言書に記載された内容を実際に執行する役割を担います。遺言執行者がいなければ、遺言書があっても、遺言の内容によっては相続人全員の協力が必要になる場合があります。
4-2. 遺言執行者を指定するメリット
- 【手続きのスムーズな進行】
遺言執行者が指定されていれば、原則として単独で預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きを行うことができます。これにより、相続人全員の署名や印鑑証明書を集める手間が省け、手続きが格段にスムーズになります。 - 【相続人間のトラブル防止】
遺言執行者がいれば、相続人は複雑な手続きで揉めることなく、円滑に遺産を承継できます。特に、相続人以外に財産を遺贈する場合(例えば、内縁の配偶者や友人への遺贈)は、相続人全員の協力が得られにくいことがあるため、遺言執行者の指定が非常に重要です。 - 【遺言の確実な実現】遺言執行者は、遺言書の内容を他の相続人に通知する義務があります。これにより、遺言の存在と内容が確実に相続人に伝わります。
- 【特定の行為の実行】
推定相続人の排除や、子の認知といった特定の事項を遺言書で行う場合、遺言執行者の指定が必須となります。
4-3. 指定の仕方と注意点
遺言執行者は、遺言書で指定することができます。 相続人や家族を遺言執行者に指定することも可能ですが、手続きが複雑であったり、他の相続人との関係性が複雑な場合には、行政書士などの士業(中立的な専門家)を指定することが望ましいとされています。専門家は、遺言執行の専門的な知識と経験を持ち、公平な立場で手続きを進めることができるため、トラブルを未然に防ぎ、相続人の負担を軽減します。
5. 遺言書の作成タイミングと見直しの重要性

遺言書は「死期が迫ってから書くもの」というイメージがあるかもしれませんが、それは大きな誤解です。
5-1. いつから書けるのか
民法では、15歳に達した者であれば誰でも遺言を作成できると定められています。これは、一般的な法律行為の制限年齢(18歳)よりも低く設定されています。
5-2. いつ書くべきか
遺言書は、元気で判断能力がしっかりしている「今」が、作成する絶好のタイミングです。不慮の事故や病気に見舞われ、急に判断能力が衰えたり、命を落としたりする可能性は誰にでもあります。一度認知症などによって判断能力が低下してしまうと、遺言書を作成することができなくなる可能性が高いです。たとえ手書きできたとしても、その法的な有効性が認められない恐れがあります。
5-3. 見直しのタイミング
遺言書は、いつでも、何度でも書き換えが可能です。新しい日付の遺言書があれば、それが優先されます。以下の状況変化があった際には、遺言書の見直しを検討しましょう。
- 結婚、出産、離婚、再婚など家族関係の変化
- 財産状況の変化(不動産の購入、退職金の受領、相続など)
- 相続人の状況変化(相続人が認知症を発症、行方不明、相続人の死亡など)
- 事業承継に関する変更
- 遺言書に記載した受遺者が先に死亡した場合:予備的な条項を設けていなかった場合は、その部分の遺言は効力を失い、遺産分割協議が必要となる可能性があります。
6. 遺言書作成における専門家への相談

自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、自己流で書くと法律上の要件を満たさず無効となったり、内容が不明瞭で手続きに支障が出たりするケースが非常に多いです。専門家の目を通さない遺言書は、かえって残された家族を困らせる「失敗例」となるリスクをはらんでいます。
私個人の考えとしては、「公正証書遺言」の作成をお勧めします。
6-1. なぜ専門家が必要か
- 形式の不備の回避:法律の専門家は、遺言書に必要な形式的要件を熟知しており、無効となるリスクを防ぎます。
- 内容の明確化と法的なリスク回避:財産の特定方法(不動産は住所ではなく地番・家屋番号で特定するなど)や、あいまいな表現(「託す」「管理させる」といった文言)を避け、法的に有効で明確な内容を作成します。
- トラブルの予測と対策:相続問題に精通した専門家は、将来起こりうるトラブルを予測し、それを防ぐための具体的なアドバイスや条項を盛り込むことができます。
- 手続きの効率化:必要書類の収集や公証役場との調整など、煩雑な手続きを代行・サポートすることで、遺言者の負担を大幅に軽減します。
6-2. 伊丹・尼崎・宝塚・西宮・川西エリアにお住まいの方へ
伊丹市周辺(尼崎、宝塚、西宮、川西)にお住まいの方々で、相続に関するお悩みや遺言書作成のご希望の方は、当事務所(ことのは行政書士・社会福祉士事務所)にご相談ください。
ご自身で抱え込まず、専門家のアドバイスを受けることが、安心して、そして確実に未来を設計するための第一歩です。
まとめ

遺言書は、単に財産の分け方を指定するだけでなく、残されたご家族が「争族」に巻き込まれることを防ぎ、煩雑な相続手続きを円滑に進めるための、非常に有効な手段です。 ご自身の意思を明確に伝え、ご家族が混乱することなく円満に相続を終えられるよう、元気で判断能力があるうちに遺言書の作成を検討することを強くお勧めします。
遺言書は、残された大切な方々に対しての “最後のラブレター” です。
この記事が、皆さまの大切な未来とご家族の安心のために役立つことを願っています。




