法務局による遺言書保管制度とは?利用メリットと注意点

自筆証書遺言 遺言・相続

「遺言書は、なんとなく作成した方が良いとは聞くけれど、具体的に何から始めれば良いのだろう?」 「家族仲は良いから、うちには遺言書なんて必要ないだろう。」 このようにお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、遺言書はあなたが築き守ってきた大切な財産を、最も有効かつ有意義に活用してもらうための意思表示であり、円満な相続を実現するために非常に重要な手段です。

遺言書がない場合、遺されたご家族やご親族の間で相続を巡る争い(いわゆる「争族」)が起こることは少なくありません。特に、不動産など分割しにくい財産がある場合や、相続人が複数いる場合、あるいは特定の相続人に多く財産を渡したいといった希望がある場合は、遺産分割協議が難航し、トラブルに発展する可能性が高まります。

今回は、そんなトラブルを防ぎ、あなたの意思を確実に未来へ繋ぐために役立つ「法務局による遺言書保管制度」について、そのメリットと注意点を、行政書士の視点から詳しく解説いたします。

「遺言書って本当に必要なの?」「資産も多くない私には関係ないでしょ?」等の疑問については下記の記事で説明しておりますのでご参考にしてください。

一般的な遺言書には、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。このうち、実務でよく利用されるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。

自筆証書遺言は、ご自身で手書きするため、費用がかからず、思い立ったらすぐに作成できる手軽さがメリットです。しかし、その手軽さゆえに、以下のようなデメリットやリスクを抱えていました。

  • 形式不備による無効のリスク
    民法で定められた厳格なルール(全文の自書、日付、氏名の自書、押印など)を守らないと、遺言書が無効になってしまう可能性があります。実際、専門家が関与しない自筆証書遺言のほとんどに何らかの不備があると言われています。

  • 紛失・隠匿・改ざんのリスク
    ご自身で保管するため、火災や災害などで紛失したり、遺言書の内容に不満を持つ相続人によって隠されたり、改ざんされたりする危険性があります。

  • 発見されないリスク
    遺言書がどこにあるのか家族に知られていない場合、死亡後に発見されないまま終わってしまうこともあります。

  • 検認手続きの必要性
    公正証書遺言や法務局に保管された遺言書以外は、遺言者の死亡後に家庭裁判所での「検認手続き」が必要です。これは遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きであり、相続人にとっては時間と手間がかかる煩雑なものです。

 

法務局による遺言書保管制度とは?

遺言書保管制度。法務局

こうした自筆証書遺言の課題を解決するために、2020年7月10日から「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され、法務局が自筆証書遺言を保管してくれる制度が始まりました

この制度は、自筆証書遺言を公的な機関である法務局が安全に保管してくれるというものです。遺言書を作成した本人が、自ら法務局に出向いて申請することで利用できます。

法務局保管制度の3つの大きなメリット

この新しい制度を利用することで、自筆証書遺言のデメリットの多くが解消されます。

①紛失・隠匿・改ざんのリスクを回避できる
法務局が遺言書を保管してくれるため、遺言書が紛失したり、第三者によって隠されたり、改ざんされたりする心配がほとんどなくなります。 公正証書遺言と同様に、公的な機関が原本を保管してくれるという点で、大きな安心感があります。

②検認手続きが不要になる
法務局に保管された自筆証書遺言は、遺言者の死亡後に家庭裁判所での「検認手続き」が不要となります。これにより、相続人の方は、遺産整理や名義変更の手続きをよりスムーズに進めることができるようになります。 検認手続きは通常、数週間から数ヶ月かかることがあるため、この手間が省けるのは大きなメリットです。

③形式面での不備による無効のリスクを低減
遺言書を法務局に預ける際、法務局の職員が遺言書の形式面(全文自書、日付、氏名、押印、用紙のサイズや余白など)についてチェックしてくれます。 これにより、民法で定められた方式に適合しないことによる無効のリスクを減らすことができます。ただし、このチェックはあくまで形式面のみであり、内容の有効性については審査対象外である点に注意が必要です。

法務局保管制度の注意点・デメリット

便利な制度である一方で、いくつか注意すべき点やデメリットも存在します。

①遺言の内容は審査の対象外
最も重要な注意点の一つが、法務局のチェックは遺言書の「形式面」に限られ、「内容」については審査の対象外であることです。 例えば、「不動産の表示が曖昧で特定できない」「特定の財産しか記載がなく、その他の財産について指示がない」「遺言の内容が矛盾している」といった、内容に関する不備があっても、形式が整っていれば受理されてしまいます。 これにより、せっかく遺言書を作成しても、遺された家族が遺産分割で困ってしまったり、手続きが滞ったりする可能性が残ります。

②原則として全文を自書する必要がある
財産目録についてはパソコンでの作成が認められていますが、遺言書本文(全文、日付、氏名)は依然として手書き(自書)が必須です。手が不自由な方や文字を書くのが苦手な方にとっては、負担となる可能性があります。

③作成者本人が法務局に出向く必要がある
遺言書の保管申請は、遺言者本人が直接法務局に出向いて行う必要があります。体調が優れない場合や、遠方に住んでいる場合など、本人の負担となることがあります。公正証書遺言のように公証人に自宅や病院への出張を依頼することはできません。

④遺言執行者の指定は必須ではない
法務局保管制度を利用しても、遺言執行者の指定は必須ではありません。しかし、預貯金の解約や不動産の名義変更など、相続手続きをスムーズに進めるためには遺言執行者の存在が非常に重要です。特に、相続人以外に財産を遺贈する場合など、遺言執行者がいないと相続人全員の協力が必要となり、手続きが滞る原因になることがあります。

⑤遺留分に関する問題は解消されない
遺言書の内容が、特定の相続人の「遺留分」(相続人が最低限受け取れる財産の割合)を侵害している場合、この制度を利用しても遺留分侵害額請求を受ける可能性は残ります。遺留分を考慮せずに遺言書を作成すると、結果的に相続人間の争いに繋がってしまうことがあるため注意が必要です。

 

行政書士からのアドバイス

法務局による遺言書保管制度は、自筆証書遺言の利便性を高め、そのデメリットの一部を補完する画期的な制度です。しかし、この制度はあくまで「形式面のチェックと保管」に特化しており、遺言書の内容そのものの有効性や、将来起こりうる相続トラブルへの対策まではカバーしていません

自筆証書遺言でよく見られる失敗例として、以下のようなものがあります。

  • 財産の特定が不正確:不動産を住所で書いてしまい、登記ができない、預貯金口座を「全預金」と曖昧に記載する、など。
  • 財産以外の事項の記載:「感謝の気持ち」だけが書かれていて、財産承継の意思が不明確。
  • 用語の誤用:「託す」「管理させる」といった言葉を使い、法的な効力を持たない。
  • 矛盾した内容:全ての財産を妻に、と書きながら、特定の預金を長男に、といった矛盾が生じる。
  • 予備的条項の欠如:受遺者(財産を受け取る人)が先に死亡した場合の、次の指定がない。

これらの問題は、法務局保管制度を利用しても解消されません。結果的に、遺されたご家族が遺言書を巡って再び「争族」に巻き込まれたり、手続きが複雑化したりする可能性があります。

大切なご家族のために、そしてあなたの最終の意思を確実に実現するためには、遺言書の内容を法的・実務的に正確かつ明確に記述することが不可欠です。

私たち行政書士は、遺言書作成の専門家として、お客様一人ひとりのご状況やご希望を丁寧にお伺いし、「争族」を防ぐための最適な遺言書作成をサポートいたします。

特に、伊丹市、尼崎市、西宮市、宝塚市、川西市といった地域にお住まいの皆様においては、地域に根ざした行政書当事務所当事務所にご相談いただくことで、きめ細やかなサポートが可能です。ご家族構成、財産状況、そして何よりも「どのような想いを遺したいのか」をしっかりとヒアリングし、法務局の要件を満たすだけでなく、将来のあらゆるリスクを想定した、実用的で効力のある遺言書を作成するお手伝いをさせていただきます

「漠然と遺言書について考えていた」 「どこに相談すれば良いか分からなかった」 そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください。あなたの「最期のメッセージ」が、遺されたご家族にとっての「道しるべ」となるよう、全力でサポートさせていただきます。

まとめ

法務局による遺言書保管制度は、自筆証書遺言のデメリットを軽減し、より手軽に安全に遺言書を作成・保管できる素晴らしい制度です。しかし、遺言書の本質的な目的である「争族の防止」や「確実な意思の実現」を果たすためには、内容面の充実が欠かせません

ご自身の状況に最適な遺言書の種類を選び、内容に不備がないようにするためにも、専門家である行政書士などの士業に相談し、適切なアドバイスを受けることを強くお勧めします。遺言書は、あなたが大切なご家族に贈る「最後の愛のメッセージ」です。そのメッセージが、いつまでも家族の絆を深めるものでありますように。

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