遺言書は、ご自身の生涯をかけて築き、守り抜いてきた大切な財産を、最も有効かつ有意義に活用してもらうために行う「遺言者の意思表示」です。また、遺言書は、親族間での相続争いを防止し、大切なご家族へ「最期のメッセージ」を遺すという意味合いも持ちます。
遺言書にはいくつかの種類がありますが、中でも「自筆証書遺言」は、最も身近に作成できる遺言書として知られています。しかし、その手軽さの裏には、様々な落とし穴が潜んでいることも事実です。
このブログ記事では、自筆証書遺言の基本的な知識から、実際に起こりうるトラブル事例、そして法務局による保管制度について、伊丹市周辺(伊丹・尼崎・西宮・宝塚・川西)にお住まいの皆様にも分かりやすく解説いたします。ご自身の想いを確実に遺し、残されたご家族が安心して手続きを進められるよう、ぜひ最後までお読みください。
※遺言書を書く意味、遺言書の種類、特に遺言を書いた方が良いのはどのような方か、といったことは下記記事をご覧ください。
1. 自筆証書遺言の基本とメリット

自筆証書遺言とは、遺言者ご自身が、遺言の全文、日付、氏名をすべて手書きで書き、押印することで作成する遺言書を指します。一般的に、公正証書遺言との比較で語られることが多い形式です。(公正証書遺言とは?作成手順とメリット・デメリット)
自筆証書遺言の主なメリットは以下のとおりです。
- 手軽に作成できる
◦ 特別な準備が不要で、紙とペンと印鑑があれば、思い立ったときにすぐに作成できます。
◦ 公証人の関与や証人の立ち会いが不要なため、気軽に書き始めることができます。
- 費用がかからない
◦ 作成自体に公的な手数料や専門家への報酬が発生しないため、コストを抑えたい場合に適しています。
- 内容を秘密にできる
◦ 作成から保管まで、誰にも内容を知られることなく行うことが可能です。
2. 自筆証書遺言のデメリットと具体的なトラブル事例
自筆証書遺言は手軽である反面、実務家からは「完璧な自筆証書遺言に出会ったことはない」とまで言われるほど、多くのリスクとトラブルの種を抱えています。知識の無い方が自己流で作成した場合、99%は不備があると考えても良いでしょう。
2-1. 形式不備による無効リスク
遺言書は、民法で定められた厳格な方式に従って作成されなければ無効となります。主な形式不備の事例は以下のとおりです。
- 全文が手書きではない
◦ パソコン、ワープロ、タイプライター、点字機などで作成された部分は「自書」と認められず、無効になります。財産目録については、2019年の民法改正以降、パソコンで作成することが可能になりましたが、その場合でも全ページに遺言者の署名と押印が必要です。
- 日付の記載が曖昧または不足している
◦ 「令和〇年〇月〇日」のように年月日を正確に記載する必要があります。例えば「5月1日」だけでは不十分ですし、「5月吉日」といった曖昧な表現も無効になります。
- 氏名や押印が欠けている
◦ 遺言者の氏名の自書と押印が必要です。押印は認印でも法的には問題ありませんが、実印を使用することで、本人が作成したという証拠能力が高まります。
- 不適切な訂正方法
◦ 訂正箇所に二重線を引いて押印し、何文字訂正したかを記入するなどのルールがありますが、訂正方法を間違えると、その部分だけでなく遺言全体が無効になる可能性があります。基本的には、間違えたら最初から書き直すのが最も確実とされています。
2-2. 内容の不明瞭さ・曖昧さによるトラブルリスク
形式は満たしていても、内容が不明瞭だと相続手続きが円滑に進まないことがあります。
- 財産の特定が不正確
◦ 不動産の場合、住所ではなく登記簿謄本に記載された地番や家屋番号で正確に特定しなければなりません。例えば「伊丹市○○1ー2-3の自宅」といった住所表記だけでは、特定が難しい場合があります。
◦ 預貯金の場合も、銀行名、支店名、口座種別、口座番号などを具体的に記載し、普通預金だけでなく定期預金なども漏れなく指定する必要があります。遺言書作成時点と相続開始時点とで預金残高や金融資産の状況が変わる可能性があるため、「残った預金については」「残った財産については均等に渡す」といった包括的な記載も重要です。
- 曖昧な表現の使用
◦ 「託す」「管理させる」といった表現は、財産を「相続させる」「遺贈する」といった法的な意味合いを持たないため、相続登記や手続きに使用できません。
- 受け取り手の特定が曖昧
◦ 「長男の子供」といった曖昧な表現では、誰に財産を渡したいのか特定しづらく、トラブルの原因になります。氏名だけでなく、生年月日や住所まで記載し、正確に特定することが望ましいです。
- 遺言内容の矛盾
◦ 「全ての財産は妻に」としながら「預金はAに」といった矛盾する記述があると、その部分が無効になったり、争いの原因になったりします。複数の遺言書が存在する場合も、新しい遺言書が優先されるのが原則ですが、矛盾する内容がある場合は注意が必要です。
- 感謝や思い、気持ちしか書かれていない
◦ 遺言書は財産承継について書くものです。個人の感謝の気持ちやメッセージ(付言事項)を記載することは可能ですが、それだけでは法的な効力を持つ遺言書とはなりません。
2.3. 保管・発見に関するリスク
自筆証書遺言は、遺言者自身が保管するため、以下のような問題が生じやすいです。
- 紛失・隠匿・改ざんのリスク
◦ 遺言書が紛失したり、内容に不満を持つ相続人によって隠されたり、改ざんされたりするリスクがあります。特に、遺言書は原本がなければ効力を発揮できないため、保管方法が非常に重要です。
- 発見されないおそれ
◦ 遺言書の存在を家族に知らせていなかったり、分かりにくい場所に保管していたりすると、相続開始後に発見されないままになってしまう可能性があります。
2-4. 手続きの煩雑さ(検認手続きの必要性)
公正証書遺言や法務局に保管された自筆証書遺言を除く自筆証書遺言は、遺言者の死亡後に家庭裁判所での「検認手続き」が必要になります。
- 検認は有効・無効を判断するものではない
◦ 検認手続きは、遺言書の状態を確定し、偽造・変造を防ぐためのものですが、遺言書自体の有効・無効を判断する手続きではありません。
- 時間と手間がかかる
◦ 検認の申し立てには、遺言者と相続人全員の戸籍謄本など多くの書類が必要となり、手続き完了までには時間を要します。この間、遺産の解約や名義変更といった相続手続きは進められません。
◦ 検認手続きには費用もかかり、ご自身で行うことが難しい場合は専門家への依頼費用も発生します。
3. 自筆証書遺言保管制度の活用

このような自筆証書遺言のデメリットを解消するために、2020年7月10日から「法務局における遺言書の保管制度」が始まりました。この制度を利用することで、自筆証書遺言の安全性と確実性が大幅に向上します。
3-1. 保管制度のメリット
- 紛失・改ざん・隠匿リスクの防止
◦ 遺言書が法務局に保管されるため、自宅での保管に伴う紛失や、第三者による隠匿・改ざんのリスクを防ぐことができます。原本が保管されるため、災害などによる破損の心配もありません。
- 形式面のチェック
◦ 法務局の職員が、民法で定められた自筆証書遺言の形式的要件(全文の自書、日付、署名、押印など)に適合しているか、外形的なチェックを行います。これにより、形式不備による無効リスクを減らすことができます。
- 検認手続きが不要
◦ 法務局で保管された自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きが不要になります。これにより、相続開始後の手続きをスムーズに進めることが可能になります。
- 遺言書の存在が通知される
◦ 遺言者が指定した者(3名まで)に対して、遺言者の死亡時に法務局から遺言書が保管されている旨が通知される制度もあります。これにより、遺言書が発見されないリスクを防ぐことができます。
- 遺言書の検索が可能
◦ 相続人などは、全国の法務局で遺言書が保管されているかどうかの検索をすることができます。
3-2. 保管制度の注意点
保管制度は非常に有用ですが、以下の点に注意が必要です。
- 内容の審査は行われない
◦ 法務局が行うのはあくまで形式的なチェックであり、遺言書の内容が適切であるか、相続争いを招かないかといった実質的な審査は行われません。内容の不備が原因で相続手続きに支障が生じる可能性は残ります。
- 手数料が発生する
◦ 自筆証書遺言の保管には、3,900円の手数料がかかります。
- 要件や手続きが定められている
◦ 保管制度を利用する場合、遺言書はA4サイズ、特定の余白、片面使用、ホチキス止め不可など、様式に細かい決まりがあります。◦ 申請は遺言者本人が法務局に出向いて行う必要があり、事前予約も必須です。
- 原本が手元に残らない
◦ 保管申請が完了すると、遺言書の原本は法務局に保管され、手元には保管証が渡されます。控えが欲しい場合は、事前にコピーを取っておく必要があります。
4. 自筆証書遺言を検討するケース
自筆証書遺言は、以下の状況で特に有効な選択肢となりえます。
- とにかく作成費用を抑えたい場合
◦ 公正証書遺言に比べて費用が格段に安く済みます。
- 緊急性が高い場合
◦ 思い立ったらすぐに作成できるため、急な病気や事故など、緊急時に迅速に遺言を遺したい場合に適しています。
5. 確実な遺言書作成は専門家へご相談を

ここまで見てきたように、自筆証書遺言は手軽な反面、多くの落とし穴があります。特に、遺言書がないため、相続をめぐって親族間で争いが起こることは少なくありません。遺言書がなければ、残されたご家族は遺産分割協議を行う必要があり、全員の同意が得られない場合は、手続きが滞り、家庭裁判所での調停や審判に発展する可能性もあります。相続トラブルの多くは、遺産の金額に関わらず起こり得るものです。
ご自身の最後の意思を確実に実現し、残されたご家族が「争族」となることなく、スムーズに相続手続きを進められるよう、専門家のサポートを受けることを強くお勧めします。
私たち行政書士は、遺言書作成に関する専門知識を持ち、ご依頼者様の状況に応じた最適な遺言書の作成をサポートいたします。形式的な要件はもちろん、内容面についても、将来起こりうるトラブルを想定し、具体的なアドバイスを提供することで、有効かつ争いの起こりにくい遺言書を作成することが可能です。
また、相続手続きは、遺言書の作成だけでなく、不動産の登記手続き(司法書士)、相続税の申告(税理士)、相続争いの解決(弁護士)など、多岐にわたる専門知識が必要となる場合があります。私たち行政書士は、これらの他士業とも連携し、ご依頼者様の状況に合わせた支援を提供することが可能です。
伊丹市、尼崎市、西宮市、宝塚市、川西市など、伊丹市周辺にお住まいで、遺言書作成にご不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。ご家族の「安心」のために、私たち行政書士が全力でサポートさせていただきます。
ご自身の想いを形にし、大切なご家族に「安心」を遺すために、今、できることから始めませんか?




