人生100年時代と言われる現代、誰もが健康で長生きできることを願っています。しかし、残念ながら、年を重ねるにつれて判断能力が低下し、認知症などになる可能性もゼロではありません。ご自身の財産管理や医療・介護の契約が困難になったとき、誰が、どのようにサポートしてくれるのか、不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな将来の不安を解消し、ご自身の「意思」を未来に繋ぐための強力な仕組みが「任意後見制度」です。今回は、伊丹市にお住まいの田中さん(仮名)の事例を通して、任意後見制度のメリット・デメリット、そして専門家である行政書士などに相談する重要性について、詳しく解説していきます。
【事例】伊丹市の田中さんが抱えた老後の不安
伊丹市で長年一人暮らしをされている田中さん(78歳)は、数年前に奥様を亡くし、最近は物忘れをすることが増えました。頻度は多くないですが、買い物でお金の計算を間違えたり、支払ったかどうか分からなくなったりすることがでてきて、日常生活に少しずつ支障が出始めています。 お子さんはいますが、遠方に住んでおり、日々のサポートは難しい状況です。田中さんの自宅は老朽化しており、将来的には売却して介護施設への入居費用に充てたいと考えています。しかし、認知症が進んでからでは、不動産売却の手続きや施設との契約が自分一人ではできなくなるかもしれない、と大きな不安を抱えていました。 また、田中さんは「万が一、自分が認知症になったとしても、大切な財産を信頼できる甥(西宮市在住)に管理してもらいたい」「特定の介護施設(海が見える施設)に入りたい」といった具体的な希望があります。しかし、もし何も準備をせずに判断能力が低下してしまったら、裁判所が選任する知らない人が後見人になり、自分の意思が反映されなくなるかもしれない、と心配していました。
このような田中さんの不安を解消するために最適なのが、まさに「任意後見制度」なのです。
任意後見制度とは?~あなたの意思を未来へ繋ぐ仕組み~

任意後見制度とは、ご本人が十分な判断能力を有しているときに、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、ご自身が選んだ「任意後見人」に、ご自身の生活、療養看護、財産管理に関する事務を委任する契約を締結しておく制度です。この契約は、公証人が作成する「公正証書」によって行われる必要があります。
将来、ご本人の判断能力が実際に不十分になった際に、家庭裁判所に申し立てを行い、「任意後見監督人」が選任されることで、任意後見契約の効力が生じ、任意後見人による支援が開始されます。
これに対し、既に判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が後見人等を選任する制度を「法定後見制度」と呼びます。任意後見制度と法定後見制度の大きな違いは、「ご自身で後見人を選べるか」、そして「ご自身の意思をどこまで反映できるか」という点にあります。
任意後見制度の大きなメリット

田中さんの事例を踏まえると、任意後見制度には以下のような大きなメリットがあります。
ご自身で信頼できる後見人を選べる
これが任意後見制度の最大の魅力です。田中さんのように、遠方に住むお子さんではなく、近くに住む信頼できる甥に財産管理や身上監護を任せたいという希望を叶えられます。後見人になるのに特別な資格は必要なく、親族以外にも友人や専門家を選ぶことも可能です.
契約内容を自由に設計し、希望を反映できる
ご本人の希望に基づいて、財産管理の範囲や介護・医療に関する方針を細かく指定できます。田中さんが希望する特定の介護施設への入居や、自宅不動産の売却など、具体的なライフプランに沿った支援内容を事前に定めておくことが可能です.
家族間のトラブルを未然に防げる
後見人を事前に指定し、財産管理や身上監護の方針を決めておくことで、将来、お子さんや親族間で財産管理や介護方法をめぐって意見が対立するような事態を避けることができます。
「認知症に対する保険」として安心を得られる
まだ元気で判断能力が十分なうちに、将来の認知症に備えて準備をしておくことは、「認知症に対する保険」のようなものです。これにより、田中さんは将来に対する漠然とした不安を減らし、安心して日々を過ごすことができるようになります.
任意後見制度の注意点とデメリット

任意後見制度は非常に有用ですが、いくつかのデメリットや注意すべき点もあります。これらを事前に理解しておくことが、制度を賢く利用する上で不可欠です。
契約した行為の「取消権」がない
法定後見制度の成年後見人とは異なり、任意後見人には、ご本人が行った契約を取り消す権限がありません。例えば、田中さんが悪徳商法に騙されて不要な高額商品を購入してしまった場合でも、任意後見人はその契約を取り消すことが原則としてできません。
【対策】
契約時に代理権目録に取消権行使の条項を明記することや、消費者契約法など他の法律に基づく取消しを検討することも可能です。
任意後見監督人の選任が必須で費用が発生する
任意後見制度の効力が発生するには、必ず家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されます。この監督人の報酬はご本人の財産から支払われ、資産に応じて月額1万円~3万円程度の費用が継続的に発生します。無報酬で任意後見人を受任する親族がいる場合でも、監督人の報酬は避けられません。
契約書に記載されていない事項には対応できない
任意後見人の権限は、公正証書で作成された契約書の「代理権目録」に明記された範囲に限定されます。もし契約書に記載されていない事項が発生した場合、後から追加することは困難であり、ご本人の判断能力が低下している場合は事実上不可能です。
【対策】
将来を見据えた詳細なライフプランを作成し、あらゆる可能性を考慮した上で、網羅的に代理権の範囲を定めておくことが極めて重要です。
判断能力低下時に自動的に開始しない
任意後見契約を締結しただけでは、ご本人の判断能力が低下しても自動的に制度が開始するわけではありません。家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てを行う必要があります。この手続きには時間と手間がかかる場合があります.
【対策】
任意後見契約と同時に、「見守り契約」や「財産管理委任契約」を締結しておくことで、ご本人の判断能力の低下を早期に察知し、適切なタイミングで監督人選任の申し立てを行うことが可能になります。
一度開始すると解除が難しい
任意後見監督人が選任され、制度が開始された後は、家庭裁判所の許可と「正当な理由」がなければ任意後見契約を解除することは非常に困難です。
【対策】
監督人選任前に、任意代理人としての業務内容やご本人との相性を十分に評価し、問題があればその段階で解除を検討することをお勧めします。
身分行為や死後の事務は対象外
任意後見人は、婚姻・離婚・養子縁組などの身分行為を代理することはできません。また、ご本人の死亡と同時に契約が終了するため、葬儀や埋葬の手配、ライフラインの解約などの死後事務も行えません。
【対策】
死後事務については、別途「死後事務委任契約」を締結することで対応できます。
任意後見制度はこんな方におすすめ!
田中さんのように、次のような状況にある方々には、任意後見制度の活用を特にお勧めします。
- ご自身で後見人を選びたい方
- 将来の財産管理や介護・医療について具体的な希望がある方
- 家族構成が複雑で、将来の親族間トラブルを避けたい方
- 一人暮らしで、頼れる親族が近くにいない方
- まだ判断能力は十分だが、将来の認知症が不安な方
- 複雑な資産(不動産、事業など)を保有しており、専門的な管理を希望する方
行政書士などの専門家へのご相談をお勧めします

任意後見契約は、ご自身の未来を左右する重要な契約です。契約内容が不十分であったり、法的要件を満たしていなかったりすると、せっかくの準備が無駄になってしまう可能性があります。
田中さんの事例のように、伊丹市や周辺の尼崎市、西宮市、宝塚市、川西市といった地域にお住まいの方々で、任意後見制度の利用を検討されている方に、行政書士などの専門家へのご相談をお勧めします。
行政書士は、お客様の意思を丁寧にヒアリングし、将来のライフプランを共に考え、それに基づいたオーダーメイドの任意後見契約書(代理権目録を含む)の原案作成をサポートいたします。また、「見守り契約」や「財産管理委任契約」、「死後事務委任契約」といった関連する契約についても、ご依頼者様の状況に合わせて最適な組み合わせをご提案できます。
複雑な法律手続きをスムーズに進め、ご自身の意思を確実に未来に繋ぐために、ぜひお気軽に行政書士にご相談ください。当事務所は、ご依頼者様の「安心」のために、地域に根差したきめ細やかなサポートを提供いたします。




